「平和学の創造−抄約−」

“The Founding of the Science of Peace−an abridged version−.”

                                                      PEACE STUDIES, No.12, Nov. 1987, pp.151-164.

 

                            西 山 俊 彦

 

 Summary:

       The present article aims to elucidate the basic feature of the Science of Peace, which is stated as a science purporting to define the Ultimate Reality according to the Ultimate  Ideal ( Idee ),  Peace, by applying  an aptly designed scientific paradigm and by creating multiple sets of alternative projects.

1.   The science of peace will become fully mature if it would be sufficiently capable to define the  Ultim-
    ate Reality scientifically, i.e., (1) according to the truly  pleromatic   sense of the Ideal, (2) on scientif-
  ic paradigm and projects.  If the Ideal, Peace, is supposed to be "Universal," "Positive", and “Ultimate,”
    instead of partial, negative, and incomplete, in its nature, the paradigm and projects, too, should be
    "Comprehensive-Integrative," "Normative-Creative," and "Ultimate-Progressive," in their capacity.

2.   Criteria to evaluate any projects are proposed to be : (1) True alternative projects of which effecti-
    veness has to be proved positively by convincing feasible-alternative-policies, instead of merely
   pointing-out the ineffectiveness of the current system based on mental fiction ; (2) Systemic logic
   which demands to satisfy the postulates of "Consistency,"  "Generalizability," "Comprehensivene- 
   ss," "Global Applicability," "Action-Guidline-Presentedness."  These criteria  being applied, TGWU,
   Brandt  Report, Palme Report, RIO, and  NIEO, all these projects are reported to be inadequate in
   various  ways, not enabling, especially, to incorporate in themselves creativity, an indispensable factor
   to define the Purported Reality far-surpassing the frame of the current value-system.

3.   The above specified requirements are,  anticipatedly, operationalized  in a project, "GAPP, the Global
    Action Project for Peace,"  designed by this writer.   From the systemic viewpoint, the project for
    peace could be re-stated as "Global Community Formation," "Global  Actualization of Human Rights,"
    "Global Satisfaction of Basic Needs" with due regard for the equity-principle and personalistic way 
   of needs-satisfaction.   The personalistic  way demands the rights  "to earn one's living," and
    "to develop one's capacity," which are, in abstract, formulated as the principles of "Self-Reliance,"
   and of  “Partnership”  to be retained both on personal and international levels.  Since there is no 
   state of peace for mankind envisaged in the extension of the current value-system, it is definite, truly 
   drastic ways of defining the New Reality have to be invented and shared as the Global Project. For
  this decisive about-face to take place,  the present article tried to elucidate, with GAPP as a humble
   example, some of the fundamentals indispensable for the solid founding of this Utmost Science.  

    
   は じ め に
T.平和理念と平和学の課題 U.既存プロジェクトとその評価 V.GAPP−Global Action Project
         for Peace−への試み
A.理念としての平和 A.評価基準二種 A.全体的構図 
1.一義的規定  1.プロジェクト段階基準 B.操作的構図
2.演繹的規定 2.システム論理基準 1.BNと諸原則
3.平和理念の機能 B.既存プロジェクトの有効性 2.操作的特徴
B.平和学の特徴 1.「TGWU」 3.「GAPP 世界平和構築計画」
1.規範定立科学 2.「ブラント報告」
2.パラダイムの涵養洗練 3.「パルメ報告」
3.プロジェクトの開発共有  4.「RIO」
     (次U以下に展開) 5.「NIEO」
6.包括多元的枠組について
7.客観性と創造性
  −科学的プロジェクトのために−
   

   

 は じ め に

 “米ソ会談結局物別れ”、1986年10月3日、レイキャビクからの最終報であった。期待は落胆に変わった。そもそも合意の可能性などあったのだろうか。充分ではなくても懐中の1,000円は捕らぬ狸の1,000万円よりはるかに貴い―― もし1,000万円を入手する見込みが充分でなければ(1) ――。抑止論なる矛盾と破壊の体制に代る新しい価値秩序への自覚的コミットメントが平和学を育成し(2)、その成熟こそが理性的変革の 鍵 となる(3)。本稿では、T.平和理念と平和学の課題、U.既存プロジェクトとその評価、V.GAPPへの試み、の順に、平和学成立にかかわる基礎的要件の幾許かに限って粗述したい。

 

  T.平和理念と平和学の課題

 

A .理念としての平和

 「平和へのおもい」(4)は万人のもの、しかし、人は平和を求めて歪み合い、平和の名の下に殺戮を繰り返す。平和理念の十全たる理解なくして、平和も平和学もあり得ない。

 

 1.一義的規定 

 ユネスコ憲章前文は平和を心的事実と理解し、教皇ヨハネ23世は人間主体の外的完成と描写する(5)平和を人権の承認に規定する世界人権宣言は、あらゆる宣言、憲章、憲法に顕れた悲願の結晶ともみられ、「平和は正義の実り」(6)の標題の下に、新秩序確立への価値基盤とされてきた。人権尊重を社会関係にみれば、人格の尊厳と平等の原則が当該社会大に確立されることと同意であって、それらの世界大の尊重、世界大コミュニティの形成と置き換えられる(7)。世界大コミュニティが成就する暁には、その全構成員が、理念、目的、規範、行動目標、帰属意識を共有する。これを単純強調して“Tranquilitas ordinis 秩序ある静けさ”(A.Augustinus),“ L'intérêt commun 公益優先”(J.J.Rousseau)、“Allgemeine Gesetzgebung der Handlungsmaxime 普遍的確率原理の確立”(I.Kant)とも表現できる。ユネスコ金言集“Peace on Earth−地上に平和を−”(1980)はこれら一義的規定の自覚
史的再構成である。石田雄が提示する4基準、「神意・正義」、「繁栄」、「秩序」、「心の静穏」、にもとづく文化的類型化(8)も原理的には一義的規定であろう。以上は全て何らかの特徴をもって平和を描写する一義的規定である。

 

 2.演繹的規定

 平和の究極完成態からも、観念的特徴を指摘できる。今平和を (1)あらゆる事実が、(2)再活性化される、(3)究極的状態と措定すれば、「調和統合的」、「全面活性的」、「究極完成的」観念と特徴づけられる。
 (1)「調和統合的」観念とは、事実規定のあらゆる関係を、部分的にではなく、普遍的に充足すること。事実規定には、図〔1〕の通り、(@)基体、(A)基層、(B)統合度が基本要件であるが(9)、独善的、一面的、非統合的、一言では、「部分的平和 Partial Peace 」に代って、「普遍的平和 Universal
Peace」のみが平和理念に相当する。
 (2)「全面活性的」観念とは、「敵対行為がなされていないだけ」(10)、「勢力が拮抗しているだけ」(11)のような「消極的平和 Negative Peace」に代って、個としても全体としてもあらゆる事実の本性を肯定的に充足する。「積極的平和 Positive Peace」(12)に相当する。〈威嚇の体系〉(13)による均衡維持は〈平和の擬制〉(14)に過ぎず、〈組織的反平和状態 Organized Peacelessness〉(15)である。
 (3)「究極完成的」観念とは、あらゆる事実が最活性化された状態は、究極的 Ultimate or Param-
ount 価値(16)を実現する
「究極的事実 Ultimate Reality」(17)であり、時空の制約の極に現成する終末的事実 Eschatologic Reality への道程 ongoing process(18)は、理念と現実との乖離に成立するプロセスである。

 

図〔1〕事実規定の三基本要件

1.基体・自己同一性

 




・本性同一性

 

       

絶対者

 集団
(人類、民族、国家、村、家、会社)

 人
(他己・自己)

 物
(自然・植物・動物)

内的、精神的、
超越的充実

 ○

外的、物質的、
社会的繁栄

 ○


統合度

各基体、各基層規定的全事実とそれら相互間に認められる
「調和融合度」「全面活性度」「究極完成度」の総和

 

 3.平和理念の機能

 平和は理念であるとは、それが究極的実現をみるまでは、観念であって概念ではないこと。今事実規定をもたらす要素を観念、具象的被規定事実を表示する要素を概念とおけば、全事実の究極的完成をみるまでは平和は決して事実とはなっておらず、したがって平和の概念的表現は不可能である。平和の概念的理解とされるイザヤ書11章6〜9節も比喩的表現を出るものではない(19)。同様に具体的存在の何歳をもって人間は完成、或いは男だけなのか女もなのか、と問うことも滑稽である。あらゆる時空の制約を超える理想態と具象的現実態とは無限に乖離したもの、しかし「平和は理念であって、
理念でしかない」ことは平和学者に十分認識された事実とはなっていない(20)
 事実の定立と再定立が理念(理想的概念)が規定する二機能である。最も“非現実”的「平和理念」に媒介されて初めて「平和に悖る現実」は定立される。「平和理念に悖る事実」は、その事実規定自体において(存在論的に)、「平和理念」によって規定され、同時に、「平和理念に悖る事実」自体の内在的規定の故に、「平和理念に合致した(新しい)事実」へと再規定される(21)。事実規定の立場に立てば、規定は再規定を必然内包する−診断と治療、評価と改善は主体的規定にあっては不可分離である。「平和状態は、創設されねばならない……」(22)にも拘らず、「……真の平和は、決して空虚な理念ではなくて、われわれに課せられた……“永遠の真理”」(23)とは事実規定論の見地から容易に理解される(24)。しかし「平和の理念」の理念たる所以も、哲学的、化学論的裏付けを欠く平和論にあっては、十全たる理解を得ていない。

 

B.平和学の特徴

 

  平和理念の奥行と機能が解明されれば、平和学の特徴は自ずと決る。「平和理念の確立を志向する
科学」は、「平和理念確立への規範性」と「科学としての基本的要件」の充足に特徴づけられるからである。

 

 1.規範定立科学

 規範定立科学、政策科学であることは、学の名称(25)、研究者の自覚(26)、社会的認知(27)、等にほぼ定着した(28)。今科学的営為が、人間主体が示す主体的、理性的行為であるとすれば、その志向性を問うことは科学的であろう(29)。まして事実規定の視点に立てば、本性とは対他関連枠組に同定される機能であって、ここに本性、目的、機能、作用、は同一原理の下に統一される。目的志向性でもって科学を規定することは決して非科学的なことではない。レベル、アプローチ、直接性等の相違はあれ、哲学、倫理学、文学、教育学、社会福祉学、医学、等々も同じく目的志向性によって規定される。
 平和理念への志向性が平和学の第一義的規定要件であれば、いかなる科学的営為であってもこの志向性を有する限り、平和学の一環となる(30)。文学であれ、政治学、生物学、戦略・兵器学、皆同様であるが、この志向性と次の固有のパラダイムへの統合が充分自覚化されていない場合には、所謂「平和研究」とみなされるべきであろう。

 

 2.パラダイムの涵養洗練

 科学としての基本的要件の第一は、理念に即した現実規定(と再規定)に相応しいパラダイムの涵養洗練、第二は、理念に即した現実再規定のためのプロジェクトの開発共有にある。
 科学が「若干の過程の上に立ち、一定の認識目的の下に合目的的選択を施しつつ、方法的合理的研究によって、組織した体系的知識」(岩波哲學小辭典)ならば、パラダイム Paradigm とは「一定の認識目的を成就するために、合目的的選択を実施し、合理的研究と定立された知識の組織化体系化を可能とする」「共有化された諸仮定」(31)であって、「現実定立の知的諸前提」(32)に相当する。パラダイムが事実定立の前提であるとともにその結果でもあることは、事実規定論に立てば容易に理解される(33)。一定科学に固有なパラダイムは、基本枠組を設定し、基準単位、次元、レベル、アプローチ等を特定、
方法、テクニック、手段、等を明確化し、独自的、自閉的、自己完結的整合性を示す当該科学に固有の世界を提示する(34)。いかなる科学も平和理念に位置づけられれば平和学の一環となるのであれば、それら科学のパラダイムもやはり平和学パラダイムの一環となる。勿論それらも平和学に固有なパラダイムとして融合統一されねばならないが、究極完成的理念定立に即したパラダイムについて論じた研究はない。次U以下にみる既存パラダイムの検討を蓄積しつつ前進を企るしかないが、再び平和理念に対応してその定立のために
演繹的に要請される三特徴を記す。
 (1)「包括・統合的 Comprehensive-Integrative」P は「調和統合的」理念に対応。国家間、政府間関係のような一部の基体とか、政治学的、国際関係論的一部の基層に限定するのではなく(35)、あらゆる事実を包括統合する P(36)、実際的には、あらゆる科学的 P を網羅するよりも、理念定立にとって最も効率的モデルとなる。
 (2)「規範定立・創造的 Value-establishing-Creative」P は、「全面活性的」理念に対応。積極的平和定立にたる P は、消極的平和を越えて、「社会的正義を具体化しうる秩序」を実現するにたる政策Multiple Sets of Alternative Policies を「創造」し、「平和の構想」(37)を提示するもの。
 (3)「究極・漸進的 Ultimate-Progressive」P は「究極完成的」理念に対応。戦争の状態が反価値であり平和の状態のみがノーマルな普遍的価値であれば(38)、 時空を超越する「究極的」理念を定立する P は、その欠如態である現実を克服する「漸進的」過程を提示するもの。
 平和学のパラダイムが平和理念を定立するにたるものであるならば、以上三つの演繹的特徴を充足する必要がある。

 

 3.プロジェクトの開発共有(次U以下に展開)

  U.既存プロジェクトとその評価

 

 平和理念に応じた新秩序の創設、この平和学の課題(39)は科学的プロジェクトの開発共有に展開されるとの了解はかなり浸透した(40)。現状を評価し発展を期すために、プロジェクトが充足していなければならない論理的基準が必要、1.プロジェクト段階基準、と、2.システム論理基準である。

A.評価基準二種

 

 1.プロジェクト段階基準

 (1) 平和理念に照らして、現行秩序、体制等、構造変革の必要性の実証(矛盾排理の実証)
 (2) 平和理念に照らした、新秩序、体制等の定立可能性の実証(矛盾排理の克服可能性の実証)(41) 
  (3) (1)、(2)各段階に伏在する諸プラス効果と諸マイナス効果の総合的評価・選択(・ならびに実施)。
 
プロジェクトの説得力、即ち、効果の承認は (1)現行秩序と(2)新秩序の2効果間の対照評価に生
 じるのであって、段階(1)が依拠する「論理的虚構」だけによるのではない。

 

  2.システム論理基準

 (1) 論理整合性 Consistency or Coherency 諸論理とその適用に矛盾がないこと、例えば、人権
 の確立、公平の確保、秩序の維持等、諸原則とその相互適応関係において
 (2) 一般妥当性 Generalizability 個別特殊的事例論証ではあっても、一般妥当性を有すること、
 歴史状況的事象には歴史状況的考察を行うこと、例えば、近代化論から開発論への変化のように
 (3) 包括多元性 Comprehensiveness 全ての事象は多元的枠組に機能する故、実証評価には充分な
 関係枠組を設定し、またそれら枠組が有する価値基盤の限界を自覚すること、軍事支出の評価にも、
 図〔2〕にみるように、ナショナリズムに代るモラール維持の公準等をも考慮すること
 (4) 全体統合性 Integrity or Global Applicability 個々の単位行為者、事象、期間等について
 のミクロ・レベルでの妥当性が、マクロ・レベルでの妥当性としても実証されること、例えば日本の
 “平和型”産業政策を各国が踏襲した場合、その結果が世界全体としても保証されること
 (5) 行動指針性 Action-Guideline-Presentedness マクロ・レベル的視点から妥当とされる目標方
 策が、ミクロ・レベル的個々の行為にとっても妥当な目標方策であること、例えば、完全軍縮、構造
 転換等、マクロ的メリットが、ミクロ的各行為者のメリットとなっていること、或いは、体制秩序
 論、組織論、運動論、行為論、間に整合性が認められること。

 

図〔2〕 軍需品の効用(例示)

一般製造品としての

直接的

産業活動 生活性維持向上 資源 経営 資本 労働 生産 流通 販売 消費
人間活動 生活維持向上  職業 収入 自己家族扶養 教育文化 各種ニード充足

間接的

産業活動 産業活性化 技術革新 設備投資 資本形成 景気対策
人間活動 職業活性化 職業教育 技術教育 労働再生産 失業対策

軍需品
としての

直接的

軍業活動 国家関係維持向上 国家安全保障 外交国際関係維持向上
国民活動 国民生活維持向上  (職業)  国民的義務遂行

間接的

軍事活動 国際関係活性化 国家利益維持向上 国家威信発揚
国民活動 国内関係活性化 軍事教育 規律 士気 モラール ナショナルアイデンティティ維持 アノミー対策

B.既存プロジェクトの有効性 

 科学的プロジェクト開発の課題は緒についたばかりと言われたが(42)、既にかなりの量が蓄積された(43)。要はその妥当性である。検討は、UNITAR,UNIDIR 等国連諸機関のもの、WOMP スタディ等各研究所によるもの、UNCTAD, NIED 関係、軍縮総会関係、はてはローマ・クラブの一連のレポートまで、対象としなければならない。しかし、実際的制約により、以下の五つに限定する。

 1.「TGWU」

 (British) Transport & General Worker's Union による“A Better Future-Strategy for Arms Conversion-”(1983) は、「従来軍需産業は、雇用確保、技術革新に有効とされてきたが、実際には、インフレ、資源枯渇、技術停滞、生活水準低下、経済の全般的沈下を招く。要するに、軍事支出は経済を疎外し、雇用を剥奪する。(したがって軍需産業の平和産業への転換、雇用維持増大は同時に可能)」と論及する。その論拠は、
 (1) R&Dの増大と生産性の低下――生産性と関係する要因はこの他にも多数あり、R&Dとは一
 義的には結ばれない。(@)「論理整合性」と(B)「包括多元性」の欠如(44)
 (2) 資本集約型軍需産業の成長と雇用機会の減少――資本集約的成長は他産業にも認められない
 か、雇用機会の減少は軍需産業に限られたことか、(@)「論理整合性」、(A)「一般妥当性」の欠如
 (3) 一般支出に比較して軍事支出の雇用創出効果が低いこと――たとえそのような数値が得られ
 ても、軍事支出のマイナス面を指摘するだけで、より効果的な産業への転換が可能であるかのよう
 な錯覚は無力、即ち、「プロジェクト段階3基準」の混同(45)

 2.「ブラント報告」

 ブラント委員会報告『南と北−生存のための戦略−』(1980)は新秩序樹立へ向けてグローバルな視点から緊急、及び、長期的提案勧告を行う、理想主義的精神に充ちた最も高邁なプロジェクトである。評価すべき見事な構図の中にも難点は事欠かない。
 (1) 平和理念の操作過程が明示的でなく、プロジェクトとしての全体像が明瞭でない
 (2) 諸提案勧告の理論的裏付け、相互関係、他方策との比較考量も不明
 (3) 経時間的過程漠然、要するに
 (4) 「プロジェクト段階3基準」が具体化されていない(46)。 勿論、世界的行動計画策定合意の要
 を随所に表明(345貢他)するが……

 3.「パルメ報告」 

 パルメ委員会報告書『共通の安全保障−核軍縮への道標−』(1982)は、核抑止論にもとづく安産保障は平和理念に逆行した悪循環論であって、先進国にとっても途上国にとっても、軍事的にも経済的にも有効なものではなく、「共通の安全保障 Common Security」への原理と原則にしたがって、軍備管理と軍縮計画への勧告提案を行い、短期的・中期的行動計画(付録)を提案する。特に評価されるのは、(1)安全保障についての明快な論理、(2)原理・原則の明示化、(3)周到な「核軍縮への道標」となる現実的な勧告提案。重大な欠陥は
 (1) 「平和は軍事対決によっては得られなく」「経済発展こそ永続的安全の唯一の基盤」であるに も拘らず(47)、社会経済的構造転換のプロジェクトを内包しない、(B)「包括多元性」と「プロジェ
 クト第二段階」の欠如
 (2) 信頼醸成 Confidence-Building についても軍事的検証に限定する、(B)と(@)「論理整合性」
 の欠如
 (3) マクロ・レベルの大眼目には異論がなくとも、個々の行為者にとっての (D)「行動指針性」が
 欠落、要するに
 (4) 新秩序樹立へのポジティヴな代案を欠き、「プロジェクト段階3基準」を充たしていないのが
 致命的

 4.「RIO」

 ティンバーゲン編『国際秩序の再編成』(1976)は「生命の尊厳と福祉がすべての人々の不可譲の権利となるような新しい国際秩序」「公正な国際社会経済秩序を今世紀末までに確立する」「規範的課題」を実現するために、10主要分野にわたる中期的(5ヵ年)、長期的(世紀末まで)提言を展開する。評価すべき点五つを掲げれば、(1)明確な規範定立意図、(2)「自由」、「公正」等6指導要項と「実現可能性」、
「効率性」他3評価基準の設定、(3)多次元包括的課題分野の明示、(4)具体的勧告提言、(5)過程把握への努力、である。五つに限り問題点を掲げれば、
 (1) 全体として外挿法 Extrapolation に頼りすぎ、規範定立を可能とする創造的方策が不十分
 (2) 特に価値秩序、社会構造の転換可能性の検討が不徹底
 (3) 個々の提言、例えばGNP0.7%の公的援助達成が世紀末の新秩序にどう関連するのか、最終
 目標、中間目標、等全体的構図の欠如
 (4) 先進国の責任を問うのは当然として、相互依存的環境にあって途上国の責任をも明示化する
 要、例えば、IMFへの注文、開発準備基金の創設等、権利の主張のみ
 (5) GNPを個人間所得格差の算出基準としているが、「世界共同体の基本目的」(75貢)に照らして
 基準単位として実態把握の点からも容認し難いこと、これがもたらす重大な帰結については
 U・B・7で後述
 以上各問題は、「システム論理基準」だけでなく、規範定立意図に不可欠な「プロジェクト段階基
 準」にも抵触する(48)。 

 

 5.「NIEO」

 NIEO新国際経済秩序とは「すべての国の衡平、主権平等、相互依存、共通の利益および協力を基礎とし、不平等を是正し、既存の不公正をなくし、先進国と開発途上国との間の拡大する格差是正を可能にし、現在および未来の世代のために着実に進む経済社会開発および平和と正義を確保する」(第六回国連特別総会1974.5.1)ために、資源の恒久主権、交易条件の改善、技術移転の促進、等々を図る一連の動向である。途上国の窮状を直視する者には NIEO の樹立は焦眉の課題である。それがプロジェクトとしての説得力を帯びるために次の3点を指摘する。
 (1) 理論的に NIEO は国家主権に基礎づけられるのか人権にか、前者であればその根拠、(@)
 「論理整合性」の欠如(49)
 (2) 資源の独占的恒久主権の根拠と科学技術移転の根拠、NIEO の目的と LLDC の関係、
 等、全「システム論理基準」充足の課題
 (3) 国内格差是正と各種人権尊重の具体化、責任ある行動計画の提示等の「プロジェクト段階基
 準」の充足だけでなく、腐敗汚職、無法内乱等々、
前提条件の改善
等々、NIEO が、単なる権利の主張を越えて、人間性高揚への真にグローバルな潮流となるためには、理論、企画、合意形成、実施の各段階に創意と決意の裏付けが必要である。     

 6.包括多元的枠組について

 「包括多元的」枠組は充全なプロジェクトに必要な基準であった。既存プロジェクトがこの基準をいかに充足しているかを 図〔3〕A〜Eに示した。ただし、次元に当るものは、ニーズ、課題、構造、機能……、と多様に変化する(50)
 (1) 「基本的ニーズ志向型」最も基礎的要件を主題とするが、社会構造との距離が問題
 (2) 「トピック志向型」明快な提示に適しているが、選択が恣意的となり、現象の理論的統合が課題
 (3) 「問題志向型」ネガティブな課題解決への姿勢は評価できるが、ポジティブな構造秩序を提示
 する要
 (4) 「制度志向型」整然、理想主義的、空理空論の危険も、エスタブリィシュメントの枠を超える
 活力とその構造化が課題
 (5) 「テーマ志向型」焦眉の課題を包括的に扱う利点、しかし機能的連関を統合構造化する要
 (6) 「機能要件充足型 Integrity Oriented Functional Frame 」社会的機能要件を、顕在潜在、
 正逆機能の如何を問わず、全的に分析再構造化する包括的枠組、クロス社会的年代的有効性を示す
 反面、正逆相反の機能等、構造化は至難、分析基準の設定は、GAPPによる例示の貢で後述

 

図〔3〕 諸プロジェクトにみられる枠組類型




事物
・課題
・構造
・機能
・ディメンション

基本的ニーズ志向 トピック志向  問題志向  制度志向 テーマ志向 機能要件志向
Basic Human Needs Topical Problematical Institutional Thematic Integrational
FAO-ILO Text Books Brandt WOMP RIO GAPP
                     
空気 環境資源 環境公害 政治制度 国際通貨 環境・資源
人口 資源エネルギー 経済制度 所有再分配と
開発融資
人口・人的資源
(含教育・医療)
エネルギー 食糧農業 人口 法律制度 食糧 情報・科学・技術
食物 産業新産業 飢餓食糧 家族制度 工業貿易・分業 大規模プランニング
新生産方式
被服 情報流通 開発産業 生産所有制度 エネルギー・鉱物 紛争解決・軍事
住居 住宅都市 貿易債務 教育制度 科学・技術 政治・法制
家庭 教育文化 南北問題 科学技術制度 多国籍企業 財政・経済

職業

科学技術

東西問題

人間環境

産業・労働

教育 統合統治 紛争軍縮    軍縮 組織・社会・文明
文化 国際軍事 イデオロギー
ナショナリズム
   海洋管理 価値・イデオロギー
文化
友人 制度体制 国連国際              
              
特徴 即物的 主要現象 現実問題 整然制度 主要課題 機能網羅
長所 明瞭 明解 アピール大 理想主義的 包括現実的 多次元包括的
短所 社会的側面欠落 部分表面的 仮象ネガティブ 皮層現実遊離 相互関連全体像 単位基準重複
課題 機能構造的全体論 一貫理論的裏付 ポジティブ全体像 現実的動態連関 全体関連構造化 創造的統合

 7.客観性と創造性
   −科学的プロジェクトのために−

 「プロジェクト段階基準」を適用できるのは RIO唯一件、しかもその第6章「世界の貧富の格差の是正」についてのみ、これだけが「公正な秩序を今世紀末迄に確立する規範的目標」を数量分析する。RIOが1973年度世銀『世界開発報告』をベースとして算出した世界人口最貧最富各1割の所得格差は13対1であった。これが「低」人口予測等最適条件を充たした時、42年後の2012年に、13対2に縮小し、さらに途上国食糧生産年率4%増を仮定すれば13対4になる、とする。この分析は実態把握と規定定率性の双方に重大な問題を提起する。世界人口最貧最富各1割の所得格差13対1はGNPを「国内格差」なしとみなした場合の値。同じく1985年世銀『報告』をベースに筆者が算出した「国内各差」なしの値は68.5対1(12年間にこれ程までに格差が拡がったことは問題だが、ここではコメントを控えよう。)
ところが同じデータをもとに各国「所得分配」を加味して再計算すれば最貧最富各1割の所得格差は何と186.1対1であって、「国内格差」なしの場合と比較して2.72倍の差が認められる。両時点間に所得分配の変化がなかったとすれば、1973年データによる同所得格差は、13対1ではなく、35.4対1である。これでは「国際秩序の再編成」の構図自体が根底から崩壊する。実態把握に関する問題の所在は明らかであろう(51)。尤も規範定立的観点からは「13:4になる」の指摘の方が一層重大、外挿 Ex- trapolation は現存枠組の投影にすぎず、平和学に固有の方法ではないからである。平和理念に合致した事実を事実とする真の客観的事実定立のためには創造性の発揮こそ不可欠であり、これは平和学に限らず、客観的科学の典型とされてきた自然科学が追求してやまなかった軌跡である(52)。矛盾と放任の体制の延長線上に新しい秩序がないとすれば、創造的再規定以外には再編の可能性はない。この課題をプロジェクト化することこそ平和学の眼目、しかし平和学の現状は誠に覚束ない。二、三の引用を許されたい。
  「現在のはしるへん趨勢では、世界経済と国際関係の将来は暗い。貧困と飢餓は終熄しないとい
 う貧困国のついての苦痛に満ちた見通し、……こうした趨勢が続くとすれば、すでに相当危険な現
 在の状況が、さらに悪化する惧れもある(53)。……私たちは、眼前の苦境を超越し、世界に対して希
 望を抱かせる計画と構想を提示しなければならない。」(ブラント報告、64−65貢)
  「地球共同体の創出をねらう平和学の構築のためには、これらの危機を媒介にした国際システム
 理論の一大飛躍が必要である。新しい政治学は超大国中心の世界秩序に対するもっともラジカルな
 原理的挑戦者として立ち現れざるを得ない。これは過去の科学史が示す理論的必然性でもあろう。
 そのためには何人かのアインシュタインとボーアとディラックとが必要であろう。」(関寛治1974 p.55)
  “Marshall Plan(54) for the Third World, the New Coalition, recommended in the RIO
 report to the Club of Rome, should be given concrete content.”
                            (
Jan Tinbergen, 1980, p.200)
 以上のような現状評価にも拘らず、M.Leitenberg, and N.Ball(
1978、p.158) が指摘するように、
W.Leontief, S.Melman, B.Udis, M .L.Weidenbaum, E.Benoit, F.Blackaby, K.E.Boulding 等は、少なくとも経済的見地からは、新秩序樹立の可能性を実証したとみなされ、この見解は1962年以降全国連リポートの路襲するところとなり、現在不足しているのは唯“Political Will 政治的決断”とさえ明言される(55)

  V.GAPP−Global Action Project for Peace−への試み

A.全体的構図 

 

 図〔4〕は平和学の基礎要件を要約提示したもの、これは「平和理念の確立」なる規範性と「科学の基本的要件」の充足という平和学の規定を、プロジェクト化の関係に、〔A〕「基本的原理(理論)」、〔B〕「基本的原則(綱領)」、〔C〕「基本的特徴(操作的表現)」として整理したものである。ここに「基本的原理」の一部「対象定立的原理」を別記し、併せて「基本的特徴」を書留める。

 

図〔4〕FUNDAMANTAL FEATURE CONDITIONING THE GLOBAL ACTION PROJECT FOR PEACE:A DESIGN FOR
THE NEW WORLD ORDER 平和学の定義にもとづく「世界平和構築計画」の基礎要件

 PEACE SCIENCE

A. Basic Principles Founding the Project
    基本的原理・理論              

B. Basic Directions Guiding the Project
基本的原則・綱領                        

   C. Basic  Characteristics Concretizing the 
       Project
       基本的特徴・原理原則の操作的表現
  

   
 

  

 

T.Reality is the Fact Built on
  Definition ( Bestimmung  )
  「全ての事実は人間主体の規定により成立」

 

 

 

 Reality   Could be Re-defined
 (Theoretical  Premise  )
 「人間によって作られた問題は人間によって
 解決され得る」「平和は可能」

    

 

 

 

The Attempt of   Re-definition toward a
New Global Order named  GAPP
「平和理念の科学的実証可能性」 

U.Reality is the Only Fact Defined
    (no other fact but presently defined)
    「現実は規定された唯一の事実」

No Other Attitude Possible but the Fact-Not-Denying One
 (Practical Premise)
 「現実立脚」

(Drastic, but) Realistic and Feasible
Planning
「実現可能なプロジェクト」

V.Peace is the Ultimate  Idee, Universal 
    value  to define the Utmost Fact, the
    Ultimate Reality
   「平和とは究極的理念、普遍的価値であり
  究極的事実を規定するもの」

Universal Value, Ultimate  Idee Realizing
Scientific Scheme to be specified
「普遍的価値、究極的理念実現への科学的
 構想提示の要」
 

Human Dignity, Fundamental Human
Rights Implementing Scientific Scheme Expected
「人権確立のための科学的プロジェト」

W.Only One Global Utmost Fact is to be 
    defined by Universal Value
   「平和は唯一つだけ可能」

Nobody-Excluding, Non-Violent, Persuasive 
Way of  Realization solely Possible
「誰一人も除外せず、非暴力、理性的科学的
土台上にのみ達成可能」
 

Scientifico - Intellectual  Approach :Multiple Sets of Alternatives Presenting Project
「科学的実証プロジェクトとは比較考量可能  な複数個の代案提示」  

  
  

 

 

 

 

X.The Utmost Fact to be defined equals
    to The Global Community Formation
   「平和定立とは世界大のコミュニティ形成」

  
 

  

 

 

The Global Community  Formation requires
Human Dignity and Equality Realizing Project
「世界大のコミュニティ形成には人格尊重と
公平実現の原則」
 

    

 

 

 

Worldwide Equality Realizing Project with a
certain Allowance Permitted
「世界大の人権確立は許容範囲を伴う平等 原則を充足して」 

Y.The Global Community Formation
    demanding Ideal-Real Gap Reduction
   「世界大のコミュニティ形成は世界大の
  格差是正」 

Gradual Transformation Strategy  required
「漸進的原則」
 

Intermediate Objectives and Respective 
Policies Specifying Project
「最終到達目標、中間達成目標、方策明示
 のプロジェクト」

Z.The Implementation has to be fully
     Integrative
   「統合調和的充足」

Comprehensive Framework  Stratery  required
「包括多元的機能要件充足の原則」
 

Multi-Dimensional, Covering Various
Aspects, Areas, Regions, Project
「単位行為者、単位地域ごとに多次元的
 要件明示のプロジェクト」

[.The Implementation has to be carried
     out  by  realzing  the Unique Dignity of
     Each Acter   Involved
   「人格実現的充足:就労権・就学権」
     Guiding Prenciples for Each Actor:
            Self -Reliance and Partnership
           「自力更生・相互協力」

Both Macro-and   Micro-Levels Defining and
Relating Principle required
「ミクロ・マクロ両レベル明示関連の原則」
 

Action-Guideline for Each Actor
Presenting Project
「各単位行為者にとって行動指針である
 プロジェクト」
 

 

B.操作的構図 

 

 1.BNと諸原則 

 (A・2)は平和定立に関与する主要要素が操作化 Operationalize されるための(56)基本枠組を設定する原理である。「平和は正義の実り」との理解は「世界大の人格の尊重」、「世界大の人権確立」、
「世界大のコミュニティ形成」(A・X)と展開される。「世界大の人権確立」は、人間本性の序列的規定に従って(57)、先ず、「人類社会大での基本的ニーズ−BN−の充足」となる(58)。人権尊重には当該社会大での平等原則の充足が含まれるから、「世界大のコミュニティ形成」は「世界大の格差是正」(A・Y)に該当する(59)。「人類社会大のBNの充足(と格差是正)」が大眼目なのであるから、これだけが独立変数 Indep.Ver. であり、社会構造はすべてこれを最適化するための従属変数 Dep.Ver. となる(60)
(A・Z)は「機能要件充足型」枠組等で説明済み。(A・[)はBN充足の方法が「人格的」であること。それは人格主体に相応しい方法によること、施与によってではなく自らの収入によって(自力更生 Self- 
Reliance 原則)(61)、そのために自ら働くことによって(労働権)、そしてそれらを可能とする教育(被教育権)と産業(生産環境整備:相互協力 Partnership 原則)(62)の振興整備に裏付けられる必要性を意味している(63)

 

 2.操作的特徴

 〔A〕原理、〔B〕原則によって操作化されたプロジェクトが有する〔C〕基本的特徴は次の通りである。
 (C・T)(「平和理念の科学的実証可能性」(64)
 (C・U)「実行可能なプロジェクト」抜本変革的、しかし、現実立脚的基本姿勢
 (C・V)「人権確立のための科学的プロジェクト」
 (C・W)「科学的実証プロジェクトとは比較考量可能な複数個の代案提示」
 (C・X)「世界大の人権確立は許容範囲を伴う平等原則を充足して」
 (C・Y)「最終到達目標、中間達成目標、方策明示のプロジェクト」
 (C・Z)「単位行為者、単位地域ごとに多次元的要件明示のプロジェクト」
 (C・[)「各単位行為者にとって行動指針であるプロジェクト」

 

 3.「GAPP 世界平和構築計画」

 基本的原理、原則(綱領)に基づきC・T〜[の特徴を有するものとして、筆者が現在企画中の
「GAPP−Global Action Project for Peace−世界平和構築計画」は、以下の条件で以下の課題に創造的解を創出する試みである。
 T.「自力更生」と「相互協力」の原理を尊重する形で−即ち、個々人には就労権、就学権の保障
 を、各国、各社会には教育、産業の振興と社会環境の整備を、国際的には交易条件、援助態勢の強
 化を計りつつ、
 U.当該時代、当該社会の「平等原則」に応じて、例えば国内、国際各5対1、個人間では25対1
 の格差の許容範囲内で、
 V、「生存権」と「平等原則」を充足する「生活権 Fundamental Human Rights for Decent Life」
 を全人類構成員に例外なく保証するには、
 W.50、100、200等、最終達成年を有する各モデルの、0、5、50、100等、各経過年ごとに、各個
 々人、社会、国家、地域単位(65)で、いかなる複数の施策と方策 Multiple Sets of Alternatives
 が必要か、
についての想像的解答を案出する計画である。
 あらゆる事実が規定によって成立しているのなら、規定の仕方を変えることによって、この非人間的矛盾の体制を変えることができる(ブラント報告13貢)。平和はひとりでに築かれない。普遍的価値の規定には普遍的参与が必要、そして平和が正義の実りなら、正義を定立する術策を共に計らねばならない。淡い夢想を希望の見取図とするのは理性の所作、科学の特権。展望を拓くことと変革への道を共にすることとは等しくないが、道程を知らずして最初の一歩は踏出せない。平和学の創造、これなくして平和の創造は始まらない。

 

  【註】

 

(1)   「すでに定立している善は、未だ定立していない最善よりも常によいもの」と Charles S. de Montesquieu
(De l'esprit des lois, 1748. 井上堯裕訳、『法の精神』、中央公論社、1972、351―566:378ページ;
G.Radbruch, Die Natur der Sache als Juristische Denkform. 久保正幡訳、「法学的思考形式としての『事物の本性』」、『イギリス法の精神』ラートブルフ著作集第6巻、東京大学出版会、81−127:110ページ)は記す。
なお文献表示は、原稿の場合は、和洋書の別なく、p.○○とし、訳書の場合は、○○貢・ページとした。

(2)

  坂本義和、「規範的方法」、『平和研究』、1976、46−51:p.49。
(3)   「…その核軍縮ですら、それに必要な政治的、経済的、社会的条件をみたさない限り、その実現はとうていありえない。」湯川・朝永宣言、『世界』、1975、172−173。ナショナリズムと抑止論的対決に代るグローバル・システム維持の課題については、K.E.Boulding、川田侃、「社会科学と平和研究について」、『資本主義の思想構造』、岩波書店、
1968、497―515:p.504参照。
(4)   A.Augustinus,『神の国』、第19巻第12章;エレミア、第29章第11節;ヨハネ・パウロ二世、於原爆資料館、1982.
2.25。
(5)   『不可分の平和』、1959.12.23、沢田和夫・P.ネメシェギ訳、『地上に平和を』、春秋社、1966、7-11ページ;
John-Paul U, From a New Heart, Peace is Born, Libreria Editrice Vaticana,1984。 
(6)   第二バチカン公会議、『現代世界憲章』、中央出版社、1965、78。
(7)   John-Paul U, Peace is a Value with no Frontiers North-South, East-West:Only One Peace, Libreria
Editrice Vaticana, 1986, 4;永井陽之助・関寛治・武者小路公秀、「シンポジウム、平和研究をめぐって」、
『国際問題』、 1974、 52-78:p.57;R.L.Merrit and B.M.Russett(eds). From National Development to
Global Community, George Allen & Unwin, London, 1981。
(8)   『平和の政治学』、岩波書店、1968、pp.18-37;岡本三男、「平和研究の方法と課題」、『四国学院大学論集』、 1974、
1−21:pp.9-13。
(9)   基体とは花の世界、小鳥の世界・・・のように事実規定の主体のこと、基層とは、例えば人間の場合、「内的、精神的、
超越的・・・」、「外的、物質的、内在的・・・」のような区別で、これにより「心の平和(平安)」、「外的繁栄、物質的充足」の差が生れ、統合度とは、基体、基層相互間の融合度のこと。排稿、「多元的事実の位相的構造―― 社会学的立論への予備考察(3)――」、『サピエンチア』第19号、1985B他参照。
(10)   I.Kant, Zum Ewigen Frieden 1795, 宇都宮芳明訳、『永遠平和のために』、岩波書店、1986、26ページ;41―59:
p.43。
(11)   第二バチカン公会議、1965、前掲書、78、131ページ。
(12)   ヨハネ23世、回勅『地上の平和』1963、沢田和夫・P.ネメシェギ編、1966、前掲書、21―69、303、68ページ;
岡本三夫、「平和学の地平」、『四国学院大学論集』第33号、1975、47−73:p.62。なお構造的暴力の不在即ち積極的平和ではないことに要注意。J.Galtung, “Peace”, Encyclopedia of Social Science, 1968 Vol.11, 487-496:
p.487;“Violence, Peace, and peace Research”Journal of Peace Reserach, 1969 A Vol.6, No.3, 167-191:p.183他。
(13)
(14)
  岡本三夫、1974、前掲論文、p.8;石田雄、「平和と変革について 平和研究国際会議からの報告(上)」、『朝日ジャーナル』、Vol.16, No.5, 1974, 79-83:p.79。
(15)   D.Senghaas,“Conflict Formations in Contemporary International Society”, Journal of Peace Reserch, Vol.10, No.3, 1973, 163-184:p.174。
(16)   岸本英夫、『宗教学』、大明堂、1961、p.17;J.Macquarrie, The Concept of Peace, New York, 1973, p.15, in B.Häring, Frei in Christus, 1981, 田淵文男訳、『政治倫理と地上の平和』、中央出版社、1986、145ページ;
A.Corradini, “Disarmament education as a distinct field of study”,
Marek Thee(ed.), Armaments,
arms. control and disarmament, Unesco, 1981, 328-337:p.335。
(17)   P.Tillich, Sein und Sinn, Zwei Schriften zur Ontologie, Evangelishes Verlagswerke, Stuttgart, 1969,
大木英夫訳、『存在と意味、生きる勇気、愛・力・正義』、白水社、1978、323ページ。
(18)   但し、主体的規定の立場からは、既にその完成態に立脚した規定行為でもある。
(19)   「おおかみは、小ひつじとともに住み、ひょうは、小やぎのそばに横たわり、小牛と、小じしは、ともにはみ、子どもが、かれらをみちびく。・・・乳のみ児は、コブラのかくれ場で、たわむれ、おさな子は、毒へびの穴に、手を入れる。私の聖なる山では。・・・」。食物連鎖だけでなく、喫煙権・嫌煙権のように、いかなる具象的存在も必然的に相互制約的である。“愛”も又然り。
(20)   排稿「理念としての平和−平和学のパラダイムの事例的検討−」、『サピエンチア』24号、1990、pp.325-346。;
同『宗教的パーソナリティの心理学的研究』、大明堂、1985A。
R.Falk, J.Galtung 等、WOMPグループの示す規範定立的アプローチは評価できるが、観念と概念の混同は、科学的パラダイムの成立を危くする。
(21)   排稿「基本的人権と人間本性−理念史と事実史への予備考察−」、『サピエンチア』21号、1987、pp.1-26。
(22)   I.Kant, op.cit., 26ページ。
(23)   I.Kant, op.cit., 111ページ。
(24)   排稿(1986A,前掲論文、pp.25-26)でこれを「平和理念であって現実ではない。しかし、全ての事物を価値あらしめる普遍的価値、現実糾合の理想、窮極的課題」とする。
(25)   「日本平和学会」が会の性格、会員活動、資格等を平和目的に限定(会則2・4・6条)する理由である。
(26)   「平和学の構築は、平和価値志向の規範性を内在化させなければならない。平和価値を中核にすえた規範性なくしては、平和学の方法論についての議論も他の学問一般の方法論論議と何の区別もできなくなる。」関寛治・永井陽之助・武者小路公秀、1974、前掲論文、p.54;「巻頭言創刊にあたって」、『平和研究』Vol.1、 1976、3-4;p.3;
西川潤、「南北問題と国際緊張」、『世界』340号、1974、233−236:p.236;岡本三夫、1974、前掲論文、pp.15、19;
J.Galtung、1969A, op.cit., p.190。
(27)   高柳先男、『平和研究』の新展開−オスロ=フランクフルト・ラインを中心として−」、『国際問題』1974、2-21:
p.18。岡本三夫は「学問の制度化とは、専門誌の発刊…、研究・教育機関の設置…、専門学会の形成などをさすが…、平和学はこのような条件を満たしつつある。」(「平和研究の展開」、日本平和学会編集委員会編、『平和学−理論と課題−』、早稲田大学出版部、1983、15−46:p.38)と論評する。
(28)   但し規範性は、あらゆる科学に共通する記述性と理論性から別個に成立するものではない。坂本義和、1976、前掲論文、p.46。
(29)   K.Popper, Objective Knowledge:Au Evolutionary Approach, Oxford, Clarendon Press, 1972, 森博訳、
『客観的知識−進化論的アプローチ』、木鐸社、1984、217ページ。なお科学の没価値性、客観性と、目的志向性、創造性との関係如何は、排稿(1986A、前掲論文)において理論的解決をみている。
(30)   物理的、生物的、人間主体的諸科学の同定については、排稿(「“もの”の諸相と価値基盤−社会学的立論への余備考察−」、『サピエンチア』第17号、1983、1−19:pp.4-8)参照。
(31)   “Theories are contructed within a paradigm defined by the variables and units used to describe and explain empirical reality.” J.Galtung, The True Worlds−A Transnational Perspective−, The Free 
Press, New York, 1980, p.29. 
(32)   T.Kuhn(The Structures of Scientific Revolutions, The University of Chicago Press, Chicago, 1962,
中山茂訳、『科学革命の構造』、みすず書房、1971、Xページ)によれば、“Paradigms are universally recognized scientific achievements that for a time provide model problems and solutions to a community of pr- actitioners. パラダイムとは(一般的に受容された科学的業績であって、)一定期間にわたって、専門家集団に設問と回答のモデル(枠組)を提供する広汎に受容されている科学的成果である。”
(33)   多機能性、暫定性、発展性についても同様。M.Masterman(“The Nature of a Paradigm”, Imre Lakatos and 
Alan Musgrave(eds), Criticism and the Growth of Knowledge, Cambridge University Press, London,1970)は T.Kuhn, 1962, op. cit.のパラダイムに21の機能を指摘し、三つの性格的類型化を試みる。
(34)   村上陽一郎、『近代科学を超えて』、日本経済新聞社、1974、p.57;A.Rapaport、 1974、前掲論文、pp.41〜参照。
(35)   岡本三夫、1983、前掲論文、p.15。
(36)   「かくて平和研究の基本的問題関心は、国際システムのコントロールと人類社会の統合ということにある」。高柳先男、1974、前掲論文、p.6。
(37)   高柳先男、「平和研究」、日本平和学会編集委員会編、1983、前掲書、3−13:p.5。
(38)   久野収、『平和の論理と戦争の論理』、岩波書店、1972、p.194。
(39)   M.Kaldor,“Creative,Democratic Planning is the central issue.”“Worker's Initiatives for Conversion
:Reflections on British Experiences”, P.Wallenstein(ed.), Experiences in Disarmament−On Conver-
sion of Military Industry and Closing of Military Bases−, Uppsala University, 1978, 87-94:p.94;
川田侃、「社会科学と平和研究について」、内田義彦・小林昇編、『資本主義の思想構造』、岩波書店、1968、497−515:
pp.502・503。
(40)   UNCTAD Resolution 122 (X), in K.Dadzie,“Key Elements in the International Development Stra- tegy”, K.Haq(ed.), Dialogue for the New Order, Pergamon Press, New York, 1980, 202-218:p.216;
Preparatory Committee for the Special Session of the General Assembly devoted to Disarmament. 
Working Paper 1977.9.1, P.Wallenstein(ed.), 1987, op.cit., pp.147・150・151;R.Prebisch. “Struc- tural Change within the South”, K.Haq(ed.), 1980, op.cit., 239-246:p.245;I.Thorson,“Preface”,
Tuomi and R.Väyrynen(eds.), Militarization and Arms Production, Croom Helm Ltd., Kent,1983;Mahbub
ul Haq,“North-South Dialogue-Is There a Future?”, K.Haq(ed.), 1980, op.cit., 270-287, p.278;
B.Ward, “A Global Marshall Plan for the Eighties”, K.Haq(ed.), 1980, op.cit., 256-269, p.271,etc.
(41)   (1)と(2)が別段階であるのは、「Aを否定すること」が必ずしも「非Aを肯定すること」にならない論理に拠る。事実規定論では、Aを否定することは、Aなる事実を否定的に事実規定することを意味するが、Aなる事実規定は、非Aなる事実を排除するだけであって、非Aなる事実を肯定的に定立するものではないからである。即ち、Aなる事実規定は、非Aなる事実規定の充分条件ではなく、Aなる事実規定からだけでは、“非A”なる“事象(観念)”は、論理的には単なる可能性 mere potentiality, 存在論的には未定立の虚構にすぎないからである。
(42)   高柳先男、1974、前掲論文、p.17。
(43)   U.Albrecht (1978) は1960年後以降3,000件に上るCP関係の特徴を分析、軍縮関係については M.Wängborg,“Disarmament Research:A Bibliographic Starting, Point”, P.Wallenstein(ed.),1978, op.cit., 185-194参照。
(44)   相関係数の皮層性と因果論的検証の関係については F.Blackaby(“The Military Sector and the Economy”,
N.Ball and M.Leitenberg(eds.), The Structure of the Defence Industry, Croom Helm Ltd., London, 1983, 6-20) R.Huisken.(“Armaments and Development”, H.Tuomi and R.Värynen(eds.), 1983, op.cit.,
3-25)参照。
(45)   M.Anderson, “The Impact of Military Spending on the Machinists Union”, 1979 A;“Converting the Workforce;Where the Jobs Would Be”. 1979 B;M.Daniels,“Jobs, Security and Arms in Connecticut:
A Study of the Impact of Military Spending on the State”, American Friends Service Committee,1980
;G.Lindgrem,“Armaments and Economic Performance in Industrialized Market Economics”, Uppsala Un-
versity, 1985;B.Munske, Swords into Ploughshares−Trident and Tornado in the North West−, The 
University of Lancaster, 1985;R.L.Sivard, World Military and Social Expenditures 1983, World Pri-
orities, Washington, 1983;P.Southwood, The UK Defence Industry, University of Bradford, 1985;T.
Woodhouse, A Peaceful Economy?, University of Bradford, 1985等も同様の欠陥。G.Kennedy, Defense Eco-
nomics, St. Martin's Press, New York, 1983の政治的、E.Benoit,“Growth and Development and Cultural
Change, 1978, 271-280の歴史的論証も論理的には同類。Benoit については N.Ball,“Defense and Development
:A Critique of the Benoit Study”, Economic Development and Cultural Change, 1983, 507-524;
M.Brzoska, and H.Wulf, Rejoinder to Benoit's ‘Growth and Defence in Developing Countries'−
Misleading Results and Questionable Methods, University of Hamburg, 1979;R.Faini, P.Arnez, and L.
Taylor,“Defence Spending, Economic Structure,and Growth:Evidence Among Countries and Over Time”,
Economic Development and Cultural Change, 1984, 487-498参照。  
(46)   W.Leontief, and F.Duchin, Military SpendingFacts and Figures, Worldwide Implications and Future
Outlook, Oxford University Press, New York, 1983, 清水雅彦訳、『軍事支出−世界的経済発展への桎梏』、
東洋経済新報社、1987、他による軍事支出の経済的効果の検証は、現行産業関連枠組内での分析であって、平和理念定立へのプロジェクトとはいえないであろう。しかし銀需品の効果の比較考量はプロジェクト化への重要な原理を供するものであり、A.Smith, The Wealth of Nations, 1776;S.Melman,“Converting from Military of Civilian
Industry:Conclusions from American Experiences”, P.Wallenstein(ed.), 1978, op.cit.,55-86:p.58
森治樹監訳、パルメ委員会報告書、『共通の安全保障−核軍縮への道標』、日本放送協会、1982、118−119ページ;
J.Galtung,“Military Formations and Social Formations:A.Structural Analysis”, P.Wallenstein,
J.Galtung, and C.Portales(eds.), Global Militarization, Westview Press, Boulder, Colorado, 1985,
1-20:p.1も同様に理解し、S.Melman, 1978, op.cit., R.De Grasse, The Costs and Consequences of Reag-
an's Military Buildup, Council on Economic Priorities, New York, 1982;J.Andeson,“Bankrupting Am-
erica;the Tax Burden and Expenditures of the Pentagon by Congressional District”, 1982等はこの原理でもって軍拡政策による現代の破局を論難する。
(47)   “The question of general and complete disarmament is of utmost importance and social development
are indivisible”. Final Document of the Special Session of the United Nations General Assembly
Devoted to Disarmament. M.Thee(ed.),1981, op.cit., p.218;“Disarmament should thus be looked upon
as an essential component of a global development effort... towards building a more just and equi-
table world communty”. R.Kothari, “Disarmament, develpoment, and a just world order”, 
(48)   「世界の大多数の人々の基本的ニーズを最低水準にまで引き上げるために、年額1,250億ドル(1974年価格)が10年以上にわたって必要である」(266ページ)と指摘するにも拘らず。
(49)   “BN requires equality of opportunity within nations while a NIEO equality of opportunity among
nations”. Mahbub ul Haq,“Basic Needs and the New International Economic Order”, K.Haq(ed.), 
1980, op.cit., 232-236:p.232. 
(50)   “While There are certainly economic, technical, political and military problems associated with
international disarmament,... Yet in practice, the discussion of technical solution is still in its infancy...”B.Hovstadius, and M.Wängborg,“Linking Disarmament and Development:Some Ideas
form a United Nations Research Project”, H.Tuomi and R.Väyrynen(eds.), 1983. op.cit., 26-38:p.38.
(51)   1973年データについての「所得分配」を加味した値は追って発表する。
(52)   自然科学にあっては創造性の発揮こそが一層客観的事実規定を可能とするとされてきた。社会科学にあっても同様と単純には言えないのはいかなる理由によるものだろう。
(53)   同、70、108ページ;世界銀行、1979、16ページ;1984、5ページ;The Council on Environmental Quality and
the Department of State, The Global 2,000 Report to the President−Entering the Twenty-First Cen-
tury, 1980, アメリカ環境問題諮問委員会・国務省、田中努監訳、『西暦2,000年の地球』、日本生産性本部、1984、56・26ページ;J.N.バグワッティ、石川滋訳「経済学と世界秩序:1970年代から1990年代へ−問題の所在−」、石川滋編訳『経済学と世界秩序−世界秩序モデルの構想−』、岩波書店、1978、1−30:9ページ;T.E.ワイスコップ、畠山次郎訳、「資本主義と低開発−貧しい国々の未来」、石川滋監訳、1978、前掲書、43-71:43ページ;L.ステパノフ、畠山次郎訳、「世界経済と世界の将来」、石川滋監訳、1978、前掲書、93−103:93・99ページ;P.Streeten,“Can Basic
Human Needs Be Met by the Year 2,000?”, K.Haq(ed.), 1980, op.cit., 219-231:p.219。
(54)   B.Ward, 1980, op.cit., p.265; R.Jolly,“Structural Change Within the North”, K.Haq(ed.), 1980, op.
cit., 247-255: A.D.Sakharov, in J.N.バグワッティ、1972、op.cit., 12ページ;アメリカ環境問題諮問委員会・国務省は「大胆で想像力にみちた手段を構じ」(1980、前掲書、57ページ)を生み出す「世界中で公的政策の早急かつ精力的な転換が必要である」。(1980、前掲書、137-138ページ)「異質の変化率」(1980、前掲書、57ページ)を生み出す「世界中で公的政策の早急かつ精力的な転換が必要である」。(1980、前掲書、35ページ)実に「精力的で、決然とした新たな取組みなくしては、悪化しつつある貧困や苦痛、環境破壊、国際的な緊張や対立を防止することはできない。即効薬はない。人口、資源、環境の問題の解決の道は複雑で長期間にわたるものでしかない。これらの問題は、世界の最も錯綜した、根深い問題−貧困、不公正および社会的対立−とからみ合っている。新たな創造的な理念、そして行動を起こす意思が強く求められている。」(1980、前掲書、32−33ページ)と根源的対応を促す。
(55)   Final Document of the Special Session of the United Nations General Asseembly Devoted to Disarma-
ment, 1978, M.Thee(ed.), 1981, op.cit., p.219 ; M.Leitenberg, and N.Ball, “The Nordic Proposal :
A.Brief Discussion”, P. Wallenstein(ed.), 1978, 0p.cit.,153-162 : p.158.
(56)   因みにプロジェクト化とは完成した操作過程を指す。
(57)   排稿、1987A、前掲論文。
(58)   RIO,J.Tinberben(ed.), Reshaping the International Order−a report to the Club of Rome−,
Amsterdam, 1976, 茅陽一・大西昭監訳『国際秩序の再編成−ローマ・クラブ第3レポート』、ダイヤモンド社、
1977、75ページ;ILO, Employment, Growth and Basic Needs:A One World Problem, 1976, p.186, 植松忠博、
1983参照;植松忠博、「発展途上国の開発戦略−新しい戦略を求めて−」、本多健吉編、『南北問題の現代的構造』、
日本評論社、1983、197−227:p.211;ランデス・ハル、『経済開発論』、高文堂出版社、1983、p.126。
(59)   RIO,前掲書、76ページ。但し、公正な充足、平等権は人権の一部故通常指摘される必要はない。
(60)   「人間こそ社会秩序の主体であり、基礎であり、目的」Pius XU,1944 in Joannes XXV, 1963、前掲書、28ページ。
(61)   RIO, 前掲書、137ページ;The Independent Commission on International Development Issues, North-
South−A Programme for Survival, 森治樹監訳、『南と北−生存のための戦略−』(ブラント委員会報告)、日本経済新聞社、1980、85・165ページ。
(62)   RIO, 前掲書、266・76ページ。
(63)   RIO, 前掲書、137ページ;「...NIEO は、もしそれに対応した国内秩序の再編成が行われなかったら、無意味あるいは実現不可能なものとなるであろう。Special Task Force of Third World Forum:Proposals for a NIEO.
Mexico, August 21-24, 1975;RIO, 前掲書、72ページ参照。
(64)   特徴というより、プロジェクトの成立理由と見なさるべきである。
(65)   グローバル・レベルのプロジェクトは下位レベル・プロジェクトの集大成をなしているのが最も効果的だろう。しかし啓発促進の要もあり、相互助長的関係を育むのが実際的だろう。

 

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