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「基軸通貨制度」は、その差損を非基軸通貨国に押しつける最も不公正な |
大阪カトリック正義と平和協議会『いんふぉめぃしょん』No.132、 2000.8.20、 4-5頁。 |
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1985年4月から丸一年をかけた「平和巡礼」を終えて手元に200ドルのチェックが残りました。10年経って換金したところ2万円を受け取りました。私が買った時は4万8千円でしたから、58%の損害です。ドル減価の原因は複雑多岐で、(1)
「双子の赤字」がこれを表現していましたが、その最大の原因は制度化された軍備拡張政策でした。円・マルク・SDRに対して、長期的にはドル安傾向は不変であり、(2)
変動相場制に移行した73年に272円であったものが、プラザ合意時の1985年には238円となり、2000年7月現在では108円台を上下しています。もし私のようなおバカさんが73年からずっとドル建て資産を持ち続けているとすると、その円での価値は40%以下に目減りしているはずですが、実際どれほどの為替差損が発生していたかについては「日本政府はその実態のひどさを恐れて外貨準備の内容を国民の前に明らかにしていない」(3)
ほどです。バブル崩壊の後遺症が長びき、名だたる銀行、生保、ゼネコンが倒産して行ったのも、国内の土地・株式の評価損だけでなく、ドル建て資産の大幅な減価によるものでした。(4) |
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【註】 |
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(1) |
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「基軸通貨を支える基盤は、その国の金融・資本市場の力が最大の武器であるが、これ以外に決定的な力は、貿易量、 |
(2) |
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田端克至「ドル高は持続可能か」、佐藤祐一・永井靖政『アメリカ経済の繁栄は続くか』 |
(3) |
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「日本政府によるドル買い支え・・・
資金の元手である外国為替資金特別会計が保有する為替評価損は95年度末には |
(4) |
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湯谷昇羊『生保危機の真実』ダイヤモンド社、1999。 |
(5) |
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今宮謙二『前掲書』、p.86。 |
(6) |
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「日本の世界最大の対外純資産(95年末に7500億ドル)は基本的にドル建てであるため、
・・・減価が大幅に進む構造に |
(7) |
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吉川元忠『前掲書』、p.192。 |
(8) |
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青島昭久「ドルの強さとアメリカ金融資本市場」、加野忠他編『マネー・マーケットの潮流』 |
(9) |
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吉川元忠『前掲書』、p.190。 |
(10) |
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吉川元忠『前掲書』、p.251。 |
(11) |
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『毎日新聞』2000・7・20 (9)。 |
(12) | 今宮謙二『前掲書』、p.86。 | |
(13) |
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佐藤隆三『円高亡国論』講談社、1995、p.111 他。 |
(14) |
神沢正典「『ドル本位制』と債務累積」、深町郁彌編『ドル本位制の研究』日本経済評論社、1993、367-391、p.338。 | |
(15) |
岩井克人「グローバル市場経済の危機」『二十一世紀の資本主義論』筑摩書房、2000、pp.4-78。 |
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(16) |
「日本の居住者にとって、円建て取引の増大はミクロ的な為替リスクの減少であるが、取引の相手方に為替リスクを移転 |
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(17) |
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田村勝省「ユーロは基軸通貨となりうるか」、加野忠他編『前掲書』、p.165-191。 |